神話の時代から令和まで、人を温める街・熱海
毎年東京が寒さと乾燥に悩む頃、新幹線なら1時間弱で暖かさと湯けむりに癒される街・熱海、今年もその街の美食と温泉を楽しむために旅程を組みました
熱海の歴史は古く、噴出するお湯を桶に入れて身を浸すと、諸病がことごとく治ったという神話時代の記述から、奈良時代に箱根神社を建立した万巻上人(まんがんしょうにん)が、海中から熱湯が噴き出たことで不漁が続き、大きな被害を受けている漁民を憐れみ、源泉を山里へ移したという伝説等が有ります
戦国時代は大名の湯治場として特に徳川家康に愛され、江戸時代は多くの文化人の紀行文に登場し、明治時代になると政財界の重鎮、著名な文人墨客が熱海に別荘を建て賑わいます
昭和39年、東海道新幹線が開通し熱海が停車駅になると、東京や大阪の大都市からのアクセスが飛躍的に向上し、1980年代後半バブル経済期、企業の保養所や大型リゾート施設の建設が相次ぎ、観光地として繁栄を極めましたが、バブル崩壊後の1990年代には観光客が減少し街は経済的な打撃を受けました
しかし2000年代に入ると歴史的な建造物の保存や温泉街の景観整備、イベントの開催などを通じて観光地として再生を目指し、新たな観光資源の開発と魅力向上に努めた結果、近年観光地として再び脚光を浴びるようになってきています

熱海市街の中心地にある『起雲閣』は、明治大正時代を通して経済界と文化の時代の寵児を観続けた歴史的建造物で、大正8年当時『海運王』と言われた内田信也の別荘として建てられ、大正14年鉄道で財を成した根津嘉一郎が譲り受け、庭園や洋館を拡張整備しました
昭和22年、桜井兵五郎が購入し旅館として開業、多くの文豪に愛され、平成12年熱海市が買い取り観光文化施設として一般公開されています




こちらのもう一つのオススメはティールー厶、建物の一部を改装しているので、大正モダンの空間を楽しみながら飲み物や熱海の名菓等が頂けます
文豪達が散策したであろう庭園を眺めながら、日本の名作を手に取ってみたくなるような時間でした


熱海の大地と海を頂くイタリアン
熱海のなぎさ公園の端のあまり目立たない場所にあるイタリア料理の店『テール・エ・メール』、こちらも10年前から熱海に来れば必ず立ち寄るオススメのイタリアンです
シェフは目白の老舗フレンチで修行を積んで、20代後半にはかつて熱海で名旅館と謳われた『蓬莱』の別館『ヴィラ・デル・ソル』のフレンチシェフとして腕を振るっていた経歴の方です
熱海の自然と食材の豊かさに魅せられ、出来るだけ自宅近くの菜園で採れた野菜と地魚やジビエを使って仕上げるイタリアンは、この地域の恵みが一皿一皿に活かされています



ディナーコースは3種類、Aコースはお魚メイン、Bコースはお魚お肉のフルコース、Sコースは季節のスペシャルコース、予約時にコースを選びます、私たちはAコースを選択

アミューズは左から長期熟成の生ハム・パルミジャーノ・ペコリーノチーズのスライス・赤軸大根と赤キャベツのピクルス、イタリアンのオーソドックスな素材と調理法ですが、すべて良い塩梅(あんばい、昔の調味料は塩と梅の酸味が主な味付けだったので、そのバランスが絶妙という賛辞です)

大根と自家製からすみをシンプルに頂きます、からすみが手作りなのでマイルドな塩味とサクッと食感の大根がマッチしています


イタリアンにはあまり使わない野菜のオンパレード(大根・白菜・春菊・小松菜等)と地魚のスズキとヒラメのシンプルなサラダ、いつもその美味しさに感心して、一度ドレッシングの作り方を聞いて家で再現しようと試みましたが、やはり足元にも及ばない味だったので、こちらで頂くのを毎回楽しみにしています

カブのポタージュはさらりとした食感ですが、少し泡立ててクリーミーさを+、緑の水玉はカブの葉っぱのオイルを散らしたもので、一緒に食べると風味が増します

パスタは手打ちの細麺にシラスとブロッコリーと源助大根(加賀野菜の一つで水分が多く柔らかい)を煮込んだもの、シェフに聞くとこの大根は煮込むと美味しいのでパスタソースに加えたそうです、確かにシラスの味が大根に染みわたっていて、和洋折衷イタリアンの面目躍如の一皿

メインディッシュのお魚は冬に珍しい鱧の素揚げにチーズ、お野菜は太葱のフリット、脂がのった鱧はそのままでも美味しい、付け合わせの葱はじっくり揚げて甘みが増し、衣の香ばしさと一緒に頂くと冬の恵みの有難さを噛みしめながら、今回もとても満足なディナータイムを過ごさせて頂きました



熱海の3日目の朝、ホテルのブログでオススメされていた魚市場へ競りの見学に行きました、豊洲のような大きな市場ではないので和気あいあいとした競りを見ながら、「スーパーの切り身や刺身しか見たことがない子供たちが、実物の魚に触れて興味を持つと、いつもは食べない魚も食べるようになってくれるんです」との事
食育やフードロスに一役買っている取り組みの様で、静岡県出身力士として96年ぶりに三役になった熱海富士関の話題を出すと、案内役の方が関取のお母様と学校の同級生だそうで、先日もイベントに来てくれたと、地元思いの優しいエピソードを聞くことが出来ました
関取は昔から体格が良かったそうで、海の幸・山の幸に恵まれた熱海の食育の良きお手本なのかも知れません、ちなみに好物は魚だそうです




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